ウェアリングオフ現象を理解しましょう
〜患者さんの声から〜
現在、パーキンソン病治療の標準薬はL-ドパであり、多くの患者さんで症状の改善が期待できます。専門医のもとで適切な治療を受けることで、多くの症状はコントロールできるようになりました。
一方で、治療期間が長くなるにつれて、薬の効き方に変化が現れることがあります。たとえば、「薬の効果が持続する時間が短くなり、次の服薬前に症状が出てしまう」「効き目が安定しない時間帯がある」といった状態です。このような状態を「ウェアリングオフ」と呼びます。
<監修> 順天堂大学大学院医学研究科 共同研究講座 特任教授
国立病院機構仙台西多賀病院 名誉院長
武田 篤先生
ウェアリングオフは、動きにくさや振戦(ふるえ)だけでなく、体のこわばり、歩き出しにくさ、思考の鈍さ、気分の変化や不安感、痛みなど、日常生活にさまざまな影響を及ぼします。しかし、患者さん自身が、「加齢のせい」「病気だから仕方がない」「まだ我慢できる」と一人で受け止めてしまい、適切な対処に至っていないケースも少なくありません。
日常生活の質(QOL)を向上させるためには、ウェアリングオフを正しく理解することが大切です。
その一例として患者さんの声をご紹介します。
※患者さんご自身の体験に基づく印象と意見を紹介しています。パーキンソン病の治療を受けているすべての患者さんに当てはまるものではありません。
薬で動ける間に通勤や入浴、食事を済ませるようにしています。 オフの時は、身体全体に力が入って重い鎧を着ているようで、首もあまり動かず、考えることまで苦しくなります。
昼から調子が落ちて、動きにくくなったり、思考が鈍くなったりするので、大事な予定は午前中に入れるようにしています。
だから薬を飲み忘れることもあります。
困っていることを言うと薬が増えると思って、あまり言えないことがあります。
動けなくなることはありませんが、座ると立ち上がるまでに時間がかかり、インターホンや電話が鳴っても間に合わないことがあります。
<監修医からのメッセージ>
外来診療の短い時間では、患者さんが「最近、少し調子が良くないな」と感じていても、主治医に詳しく伝えられないまま診察が終わってしまうことがあるかもしれません。また、今困っている症状がパーキンソン病に関連したものだと気づかず、お話しされないケースもあると思います。
パーキンソン病の症状は一日の中で変動しやすく、診察室での様子だけではすべてを把握しきれないのが実情です。私たちはできる限り丁寧にお話を伺うよう努めていますが、日常生活のどの時間帯に、どのような困りごとがあるのかを共有していただくことが、より適切な治療への大きな一歩となります。
現在、ウェアリングオフの治療は進化しています。お薬の調整だけでなく、症状の変化に応じた多様な投与方法や治療選択肢を検討できるようになりました。特に生活に支障をきたす「深いオフ」の状態を改善することは、体の動きを良くするだけでなく、精神的に前向きに過ごしていただくことにもつながります。
小さな変化や、治療に対する不安、ご希望など、どんなことでも構いません。
メモに書き留めて、どうぞ遠慮なく私たちにご相談ください。
国立病院機構仙台西多賀病院 名誉院長
武田 篤
