病気の経過と
困った症状
パーキンソン病は、病気そのものが直接の原因で亡くなることはありません。現在では、発症が60歳以降であれば、寿命は健康な人とほとんど変わらなくなってきました。 パーキンソン病は、発症から20年の間に一般的に下図のような経過をたどるとされています。ただし、適切な対応をすることによって、病気の進行を緩やかにすることもできます。
- Fahn S: Ann NY Acad Sci 991: 1-14, 2003/Kempster PA et al: Brain 130: 2123-2128, 2007より作成
武田篤 (柏原健一ほか編) : みんなで学ぶパーキンソン病. 南江堂, 東京, pp21, 2013.一部改変 - ※出現する症状や病気の進行は、それぞれの患者さんで異なります。
近年、さまざまな治療薬が開発され、早い段階から専門医による治療を続けることにより症状のコントロールが可能で、安定して過ごせる期間が長くなってきました。とくに治療を始めて数年間は、L-ドパをはじめとするパーキンソン病治療薬を服用すれば、ほぼ1日中症状は良くなります。(治療を開始してしばらくの間は、薬が良く効くことから「ハネムーン期間」と呼ばれます。一般に3〜5年は、とてもうまく症状をコントロールできます。)
一方で、病気が進行してくると、困った症状が出てくることがあります。比較的多くみられるのは、
ウェアリングオフ現象や
ジスキネジアと呼ばれる症状です。このような困った症状を運動合併症と言い、運動合併症が現れるようになって以降を進行期パーキンソン病と呼びます。
進行期パーキンソン病に対しては、従来の経口剤や貼付剤の治療だけでなく、装置(デバイス)を使ったデバイス補助療法*(DAT)といった治療による症状のコントロールを考慮します。
現在、日本で行えるデバイス補助療法は、L-ドパ持続経腸療法と脳深部刺激療法(DBS)の2つがあります。
*デバイス補助療法:Device Aided Therapy(DAT)
治療のこと デバイス補助療法(DAT)
ウェアリングオフとは?
L-ドパを飲むと、パーキンソン病の症状が良くなりますが、
飲んで2〜3時間たつと、薬の効果が切れる現象です。
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- ・手足がふるえる
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- ・歩くときにすり足になったり小刻みになったりする
- ・動作がゆっくりになる
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- ・何もする元気がなくなる
- ・だるくなる
- ・何となくいやな感じがする
ジスキネジアとは?
L-ドパが効いている時間帯に手足が勝手に動く症状です。ウェアリングオフが出始めた時期から少し遅れて出てくることが多いです。
ジスキネジアが軽い場合には患者さん自身は気づかず、周囲の人が先に気づきます。患者さんご本人が気づかない程度なら対策の必要はありませんが、症状が強くなると患者さん自身も疲れるし、人前に出るとき気になるので対策が必要になります。
武田篤(柏原健一ほか編) : みんなで学ぶパーキンソン病. 南江堂, 東京, pp21, 2013.
水野美邦 : パーキンソン病とともに楽しく生きる. 中外医学社, 東京, pp33-35, 2013.
村田美穂(監修): スーパー図解パーキンソン病. 法研, 東京, pp70-73, 2014.
運動合併症が現れる原因については、
次の「困った症状が起こる原因」をご覧ください。