監修のことば

順天堂大学 医学部
脳神経内科 教授

服部 信孝 先生

本年(2017年)、世界で最初の症例報告からちょうど200年になるパーキンソン病は、1000人に1〜1.5人がかかると推定される疾患で、高齢になるほどその割合は高くなり、60歳以上では100人に1人が発症すると言われています。この疾患の治療に関しては、これまでいろいろな薬が開発されており、数ある神経難病の中では、「もっとも普通の生活に戻ることができる」疾患です。とは言うものの、パーキンソン病は進行性の疾患ゆえ、時とともに薬の種類や服用する回数が増えたり、飲み方をどんなに工夫しても症状を十分にコントロールできなくなる場合があります。
※病気の進行スピードは個人差があります。

パーキンソン病の進行期において特に問題となる運動合併症は、薬(L-ドパ)が効き目をあらわす濃度の幅(有効治療域)が狭くなることが主原因と考えられています。そのため進行期には、薬の血液中の濃度をできるだけ一定に保つことが大切です。また、パーキンソン病の患者さんは胃腸の働きが悪くなり、小腸からの飲み薬の吸収が不安定となることで血液中の薬の濃度が不安定になることも原因の一つと考えられています。これまでの薬の組み合わせや薬を飲むタイミングを工夫してもウェアリングオフやジスキネジアといった症状に悩まされるようになったら、次のステップを考える必要があるかもしれません。

このような段階にさしかかった患者さんに対する治療法としては、現在、外科手術による深部脳刺激療法(DBS)に加え、昨年秋からはL-ドパを、お腹に設置したチューブを通じて、小腸から直接吸収させる治療法も使えるようになりました。これらの機器(=デバイス)を活用した治療法は、DAT(Device Aided Therapy, あえて日本語に訳すと“機器装着療法”とでも言いましょうか)と呼ばれています。患者さんがこのような2つのDATを本格的に「選択」できるようになったという点で、2017年は、日本におけるDAT元年と位置づけられます。

このサイトは、進行期パーキンソン病患者さんのあきらめない治療を応援し、ひとりでも多くの皆さんに笑顔を届けることを願っています。

2017年5月21日 DAT元年
服部 信孝